舞の道
元小結・舞の海と大相撲のサイト。勿論アンオフィシャル
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>>相撲の楽しさを伝える為に

舞の海は現役引退後、全国各地で 講演会を行っています。
こちらでは2003年9月27日に福島県で行われた講演会の内容をご紹介します。special thanks to マキオ


>>演題:「決してあきらめない」
主催:学校法人松韻学園蓬莱もみじ幼稚園  日時:2003年9月27日(土)AM10:00〜11:30

>>家族について
教室に入ってきてすぐ、キョロキョロ辺りを見回しながら舞の海がこんなことを言いました。
「末息子が幼稚園の年長組なんですが普段こういうところに通ってるんですね〜。」
仕事が忙しくて息子さんが通ってる幼稚園になかなか行けないのでしょう。
中学3年の女の子と小学6年の男の子どっちらかが、今反抗期の真っ盛りだそうです。
「女の子は母との間に女同士の戦いがありますね。」と言ってたので女の子の方かと思われます。
「地球は自分中心に回っていると思ってますから困ったもんなんですけどまあ、ハシカみたいなもんでね。
親なら誰でも一度は通らないといけない道ですから・・・」
と。あぁ、ちゃんとお父さんしてるのね。うふふ(^_^)

それから冒頭に「結婚記念日になんかプレゼント買って帰った方がいいですかね?」と客席に問いかけて
前列の人、答えに窮してました(笑)
家族思いな舞の海。講演のあった9月27日は結婚記念日だったそうです。

>>大相撲中継
NHKの大相撲中継で解説をしている舞の海。その裏話をしてくれました。

++ NHKからの依頼++
引退後はもらえる仕事は何でもやるぞ!と決心したけれど、
NHKから相撲解説の依頼を受けた時は正直かなり迷ったという舞の海。
小結で引退した自分に解説する資格があるのか?と、かなり悩んだけれども
「舞の海さんが感じるままを話してほしい」と言われ決心されたそうです。

++仕事中のエピソード++
向正面の解説席に座っていると正面解説の席が見えます。
正面解説に北の富士勝昭氏(元横綱北の富士)、向正面解説に舞の海が座り中継をしていたある場所のこと。
舞の海が喋っている時、自分の出番じゃないからと北の富士がなんと欠伸&伸びを思いっきりしているではないですか。
自分は向正面の席で客に翻弄されながらも懸命に解説してるというのに。
そうでなくても向正面の席は行司の背中で取組が見難いのに(-_-;)
サボっているのならちょっとイタズラしちゃえっと思い、
「それは北の富士さんに聞いたほうがいいんじゃないですか?」と話をふって慌てさせました(笑)
本番終了後、北の富士から「急に話しかけるな!」と怒られたそうです。
すると敵も然る者。黙って引き下がるわけがありません。
数日後再びコンビを組んだ時「それは舞の海さんの方が知ってるでしょ」と仕返しをされちゃいました。
さすが元横綱ですなぁ〜(゚▽゚*)(ヲイ)

大相撲中継をご覧になった事のある方はお分かりかと思いますが、向正面の解説席は桝席と桝席の間にあります。中には話しかけてきたり肩を揉んでくるお客さんがいるそうです。初めは取組を見逃したりして対処に困っていたけれど、最近は「今は本番中なのですみません」と書いた紙を見せてその場を凌いでいるそうです。
向正面の席にはモニターという小型テレビが置いてあり、正面からの映像(私達がテレビで見ている映像)を見ることができます。
ですがスタッフに「それは見ないで下さい」と言われたそうです。
モニターを見て話すと正面解説と同じ視点になってしまうため肉眼で相撲を見て欲しい、とのこと。
行司さんの体で遮られて見えにくい上に、次から次へと進むので「先程の取組は○○でしたね」とか言われても、
初めの頃は内容を覚えていなくてしどろもどろ・・・。でも、回数を重ねていくうちに残像が頭に残るようになったのだそうです。

++解説をする時の心がけ++
力士の技術については色々言いたいけれど、人格に触れることは言わないように気をつけているそうです。
それから、「(もうひとりの)解説者と変に迎合しないようにしたい」とはっきり言い切っていました。
「ひとつの勝負に対して各人の考え方が違うのは当然だし、自分なりの見方を大事にしていきたい」から。
無難にコメントして楽に逃げることもできるけど、そんなことしてたら使ってもらえなくなりますとも言ってたそうです。

仕事中に困ることは、仕切りの時になってアナウンサーから「この取組について一言」と言われること。
力士も(自分も)集中してるし、第一取組を一言でなんて言えませんから。
アナウンサーによって答え方をいろいろ考えてるそうです。 

解説者の仕事していると、知ってる情報を言えないのがもどかしいと感じることも。
「○○は今日はどうしたんでしょう?」とふられて、
「この力士昨日飲みすぎで二日酔いなんです」と言いたい、けど絶対言えない(笑)

>>現役時代の思い出
++稽古++
地方巡業に行くと土俵が1つしかないので、
稽古は申し合い(勝ち抜き方式の稽古。勝った力士が次の対戦相手を指名できる)しかできません。
その時土俵にいたのは。相手を次々指名していたのですが
舞の海は曙のような大きな力士とまともにぶつかったら内臓に損傷をきたすかもしれない、と心配し
指名されないように他の力士の影に隠れていました。なのに曙から指名されてしまったのです。
格上の力士に指名されたら絶対に断れません。仕方なく土俵の上へ。
案の定、一突きで2m位飛ばされました(笑)
思った通りの展開で、曙は自分を相手にしていては全然稽古にならないはずなのに、
その後も一定時間おきに指名を受け続けていることに気づきました。
曙も土俵にずっといると疲れるので力のいらない私を休憩代りにしていたんじゃないでしょうか?(笑)

曙と取ると、とにかく突き飛ばされて終わっていました。まともに組んでも勝てません。
立会いで変化して足を取ったらいけるかも・・・と考えたけれど本番で当たるかもしれないので、
それは稽古では試さずにひたすら突き飛ばされ続けていたそうです。

本場所で曙と対戦。立合いで横に変化して敵の腰にへばり付いた舞の海。
すぐに内掛けにもっていこうとしたが曙の足が長すぎて手が届かない。当てがはずれたか?
けれども運良く曙が慌てて強引に吊り出そうとしてくれたので、2人の距離が狭まり曙の足に手が届きました。
だから技をきめることができたんだそうです。
「こんな風に相手のミスを拾った形の勝ち方が自分には多々あります」(←会場、笑いと拍手)
大きい力士にはとにかくじっとしてられるのが嫌だったそうです。
「貴乃花さんなんかだと土俵に上がった時から、獲物を追い詰める蛇のようにじぃ〜っと見据えられて
とても裏をかくことは出来ませんでした。もう、隙が無いんです・・・。」としみじみした口調で言ってたそうです。

++先輩の義務++
先輩力士は自分の付け人に対して、稽古をつけてあげて強くしてやる義務があります。
相撲をやりたい!と入門してくる新人は多いけど1年、または1ヶ月、早いのだと1日で辞める人もいます。
ゴミを捨てに行ってきます、と出て行ったきり帰ってこない事なんかもあるそうです。
自信を失う時は誰にでもあるので先輩として励ましたりするんですが、それだけでは駄目。
時々お小遣いをあげたり、御飯を奢ってあげたそうですが、一回の奢りに10数万円かかることも!
関取はお金がかかって大変だそうです(笑)
後輩に何処に行きたいか訊くと大抵焼肉が食べたいと言います。
店に行くと2〜3時間平気で食べ続けてその後にラーメン2〜3杯食べたりするとか。

付け人というのが舞の海は苦手だったと言います。
ちょっとその辺に行くにしても、自分より大きい人に囲まれて出歩くことになるからです。
お風呂も一緒に入って体を洗おうとするので、断ったら
「自分達の仕事が無くなります」とお願いされ、舞の海は両腕を広げて仁王立ちして洗われていたそうです。
因みに、入門時の舞の海は「足洗い係り」だったそうです(笑)

>>引退
++親方業++
引退した後、本当は親方になって後進の指導をしたい!と思っていたんですが、定員が105人と決まってる上、
出羽海部屋でも親方が7〜8人いて皆辞めそうにないし(笑)そういう運が無かったと思い、諦めたと言っていました。
引退して4年経つけれど本当は続けたかったそうです。
引退の理由は「かっこよく言えば体力、気力の衰え、はっきり言えば弱くなったから。」
そして幕下に落ちて給料をもらえなくなるというのが決定打だったそうです。
自分ひとりなら部屋に残って幕下で続けることもできたが結婚してる以上、家族を養う義務がありますからと言っていました。

++大学講師++
舞の海は引退後の翌年2000年4月から1年間にわたり、帝京大学で講師を務めました。
テーマは「相撲から学ぶ人生社会学」
力士は怪我をしたら終わりだから引退後は安定した仕事に就きたいと考えたので、講師の依頼が来た時は嬉しかったそうです。
引退後に講師の仕事が入った時、大学の仕事だから高給かな!と当てにしてたら振込まれたのは1ヶ月分が2万6千円。これじゃ とても食べていけないと思ったそうです。
(客員だったし授業の回数も少なかったから仕方ないかも・・・。)

>>ドラマ出演
「金田一少年の事件簿」(2001年放送 日本テレビ系列)から教授役をもらった時「頭良さそうな役で嬉しいな〜」と思っていたら設定が「自殺に失敗して植物人間状態」というもの。血色の良い舞の海さんは何度もNGになったのだそうです。
「植物人間らしく見せるために口を開けといてください、と言われまして」と、実際に口をパカっと開けてみせる舞の海(笑) 演技指導の際、口を半開きにして瞬きをせず遠くを見てるように、と言われたんだそうです。 なかなか苦しかったみたいです(笑)
舞の海扮する教授の婚約者役を演じたのは小柳ルミ子。と言ったら即、会場はどよどよとしたそうです。
すると舞の海も小首をかしげながらこう言いました。「私も年の差が・・・と思ったんですが(笑)」
  (そりゃそーだ。釣り合わないじゃん(笑))
「老けたメイクをしてもらって鏡を見ると、ちゃんと釣り合いとれて見えるんですね、これが。」
横たわる舞の海さんの枕元で小柳ルミ子が延々泣というくシーンでは
カメラがアップになった瞬間、映ってる側の目だけ涙を本当に流したので「すごい!」と驚いたそうです。
泣くシーンの撮影って普通は3分くらい後に効いてくる薬を下瞼に塗るんだそうです。
舞の海も以前泣くシーンを演じたことがあるのですが薬無しでは涙を出せなかったとか。
「あれは泣こうとしても泣けるもんじゃないですよ!」と力説してた舞の海。よほど衝撃を受けたようですなぁ。
ルミ子の話なぞどうでもいいよと正直思って聞いていたマキオさん。
(すみません。私SUSANもそう感じました(^_^;)だって薬を使わなくとも泣ける女優さんはいっぱいいるんですものぉ。)
ですが舞の海は「涙」の件では本当に感心したようで・・・熱く語っていたそうです。
また、「転がしお銀」(2003年10月〜12月放送 NHK総合)にも出演した舞の海。
セリフが無いのに画面に収まってないといけない時、どういう表情すればいいのか分からなくて困ったと話していました。

>>質問コーナー
講演会の最後は質問コーナー。ある男性(推定75才。次の横綱候補は琴光喜だと断言。)が
「横綱に日本人がいないのは情けないと思わんですかっ」と興奮気味に問いかけていました。
それを聞いた舞の海は「お父さんと握手したい位です」と同意。
「外国から相撲をやるぞっと来ている若者(かつ上位で頑張ってる力士)のハングリー精神の大きさは
今の日本人とは比べ物になりません。国を背負ってる覚悟でやっていますし・・・。
残念ですが日本の力士がもっと強くなるには日本の社会全体が変わっていかないと難しいんじゃないかと思います」と発言。

その後も上記のお爺さんが引き続き「公傷制度廃止をどう思っとります?私ぁ相撲がつまらなくなると思っとります!」
と激しく主張するなど、結局この方のみで終了してしまったそうです。
司会進行役をやっていた園長先生の堂々たる仕切りっぷりで切り上げられてしまった雰囲気で、
舞の海も「え?もういいの?」ってな表情してたとか。(個人的に園長先生にイエローカード)

>>最後に
最後にお客さん全員と握手。間近で見ると舞の海は本当に小柄な方だったので不思議な気がしたというマキオさん。でも手はとても厚くサラサラとした手触り。やっぱりお相撲さんだっただけあるなぁ〜と納得しながら帰路についたそうです。
舞の海は肌ツヤが良くて栗色の瞳をしてたとか。とても楽しい1時間半を過ごせたそうで。良かったですネ♪


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